2017年04月09日

現状維持バイアス

行動経済学では、「人は変化よりも現状維持を選択する傾向があり必ずしも効用を最大化させるわけではない」とされ、これを現状維持バイアスと呼ぶ。
現状維持バイアスは、人の合理的な判断を妨げるので意識的に取り払う必要がある。

これを取り払うには現状が悪いと意識させるか変化が良いと意識させるか、いずれかまたはまたは両方の働きかけが必要になる。
要は、相対的に現状維持より変化の方が合理的であると多数が認識することが必要である。

ブレグジットやアメリカの政権交代は、現状維持バイアスに対する慣れと油断の結果生まれたのだと思う。
トランプ氏は現状に不満を持つ層に絞ってアメリカ第一主義というわかりやすいスローガンを掲げた。

一方、クリントン氏は政権時代のスキャンダルに対する防戦に力をそがれ、変化がもたらす効用について夢を与える余裕を失った。
ブレグジットも、ECにとどまることによる効用の方が離脱による効用の説明より国民への訴求力の点で劣っていたのではないか。

2つの出来事は何れも変化にはつながったが、現状維持バイアスを正しく克服できたかという点では疑問が残る。
目標とする将来像やその実現ステップに対するコミットメントを戦わせて克服していく必要があると思う。

交通量予測や交通シミュレーションに携わる立場からも、市民、国民に訴求する政策評価指標とその推計ツールの開発に取り組んでいきたい。


4月9日 Y.I.記
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posted by nmdc-yi at 13:55| 交通シミュレーション

2012年02月02日

交通シミュレーションの活用法

1月末、交通工学研究会から「交通シミュレーション活用のススメ」が出版された。
私も、準備会の発足から5年越しで、執筆・編集メンバーの一人として係ってきた。

旧版の「交通シミュレーション適用のススメ」は、平成16年7月に出版された。
丁度、交通シミュレーションが実務に適用され始めた時期で関心も高かった。

その後も業務への適用件数は着実に増加し、それに伴って、交通シミュレーターも増え、高機能化が進んだ。
今では3D表示や歩行者のシミュレーションも当たり前になりつつある。

しかし、その頃から、高機能化だけが交通シミュレーション普及の条件なのかという疑問を抱くようになった。
人や社会のニーズは漠然としているので、高機能な道具を揃えても使い方がわからない。

珍しい間は、暇つぶしや目くらましの道具としての利用価値はあるが、ニーズとかけ離れた機能はいずれ使われなくなる。
作り手や売り手の自己満足にしか過ぎない、3Dテレビのような“売れない多機能商品”を増やすだけである。


今回、執筆にあたって、この疑問に答えを出したいと思い、交通シミュレーションの活用法について考えた。
幸い、プロローグにあたる第1章を担当できたので、私なりの考えを書くことができた。

簡単に紹介すると、4節「お勧めします、交通シミュレーションのこんな活用法」では、専門家が交通シミュレーションを作って専門家でない人が見る一方向の情報伝達手段ではなく、双方向のコミュニケーションツールとしての使い方を薦めている。
また、5節「まだまだ拡がる、交通シミュレーションの効果的な活用法」では、その発展形として、カーナビや交通安全教育、環境問題の解決など社会のニーズを実現するツールとしての利用を提案している。

スティーブ・ジョブズ氏は、パソコンや携帯電話の枠にとらわれることなく、スマートフォンという新しいジャンルを開拓した。
最新の、高度な機能を盛り込むことより、ニーズを実現する道具としての使いやすさや美しさを優先した。

交通シミュレーションも、既成のジャンルの中で高機能化を目指すのではなく、他のジャンルと融合しニーズを実現するツールとして認知されるよう進化していきたいものだ。


2月2日 Y.I.記
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